令和6年総務企画委員会 2024年6月27日
【富田昭雄委員】
デジタル化・DX推進について伺う。
最近、県庁内でデジタル化・DX推進体制の強化ということで、若手を中心に編成し、各局に担当を配置したと聞く。デジタル化・DX推進担当が局内において業務の改善等も実施しているとのことだが、具体的な取組内容を伺う。
【DX推進室担当課長(DX推進)】
各局のデジタル化・DX推進担当では、新しい仕組みの構築や既存の仕組みの見直し、システムの改善などを検討している。具体的に、新しい仕組みの構築では、職員のスケジュールを局内で一元管理し共有できるシステムや、会議や幹部への説明に際して、大型のモニターを設置してペーパーレスで議論し、出された意見をその場でリアルタイムに修正・反映できる仕組みを導入している。また、正確な記録を必要とする会議等においては、音声認識システムを用いた記録作成に併せて、生成AIで文章を校正するなどの仕組みを検討している。
次に、既存の仕組みの見直しでは、行政文書の開示請求に係る写しの交付について、これまで対面または郵送に限られていたものを、オンラインでも対応できるよう検討を進めている。
また、システムの改善では、現在、紙で管理している立入検査等の記録のデータベース化や、システムに手入力していたデータを国などのシステムと連携して自動入力するなどの改善に取り組んでいる。
【富田昭雄委員】
便利になって効率がよくなることは分かるが、各局の取組の個別の課題だけでなく、全体的な全庁の共通する改善内容があると思う。専門的な知識も含めて、DX推進室としては全庁的な課題に対してどのようにDXを進めていくのか。
【DX推進室担当課長(DX推進)】
生成AIを活用した記録作成など、全庁に共通する業務改善は、優良事例として全庁に展開するとともに、共通ルールにしていく。各局の取組は、ビジネスチャットやスケジュール管理など、1人1台パソコンに搭載された機能の活用が基本となっている。
また、RPAと呼ばれるパソコン上の提携業務を自動処理するソフトウェアや専門的なプログラムの知識を必要としないノーコード、ローコードツールといったものの活用を想定しており、これは、操作研修などを引き続き実施していく。
さらに、より高度なツールを活用した取組にも対応できるよう、例えばデータの見える化、分析をして業務に役立てるソフトウェアや生成AIの有効な使い方など、専門的な知識、技術を学ぶ研修も実施していく。
【富田昭雄委員】
取組については理解したが、便利になり、生成AIなどの機械が考えてくれるため、自分で考えなくなるという点が、本当によいのかと心配である。大学生が論文を生成AIで作成し、自分では考えないという話も聞く。県職員も生成AIを多用し、自分の業務を行わなくなると困る。
ペーパーレス化をすることはよいが、無くすことで不便になることもある。デジタル化やペーパーレス化により、かえって作業の手間が増えると本当に困る。例えば、これまでは何かあれば、紙資料ですぐに調べることができたが、何もない状態で仕事してください、という状況などが考えられる。これが、議員だけならよいが、職員も調べるのに時間がかかって仕方がないという状況が生じていれば、大変な問題だと思う。今まで紙で印刷してあったものがなくなったことで、改めて各自で印刷して持ち歩く状況が生じていれば、本末転倒である。
そういった事態が生じないようにどのように取り組んでいるか。
【DX推進室担当課長(DX推進)】
今回のデジタル化・DX推進に係る取組の実施に当たっては、デジタル戦略監をリーダーとする愛知県庁デジタル化・DX推進チームを設置し、組織的に各局等の取組への支援、進捗管理、情報共有を実施している。具体的には、チームの事務局を務めるDX推進室と総務課において、各局の取組についてヒアリングを実施し、取組を進めていく上で生じる課題や、それに対する解決策等について支援を行っている。その際には、県民、事業者、市町村からの視点を踏まえるとともに、デジタル化を進める前提として業務自体の見直しや業務フローの見直しを検討するよう助言していきたい。
【富田昭雄委員】
DX推進室は、課題をよく吸い上げてフォローして、進捗状況もチェックしながら進めてほしいが、各局によって温度差や目的も違うと思う。各局の取組は、局長が目標を設定していると聞くが、現在どのような考えで進んでいるのか。
【人事課担当課長(人事)】
各局のデジタル化・DX推進は、局長等の人事評価で、今年度から新たに局のデジタル化・DX推進に向けた目標を目標項目に追加し、必ず設定する。各局長が局のデジタル化・DX推進を重点目標の一つとして設定し、リーダーシップを発揮して取り組むことで、局全体での取組を確実に推進する。
また、各局のデジタル化・DX推進担当についても、人事評価の役割達成度評価においてデジタル化・DX推進に係る取組を目標に設定することとしており、その取組の成果やプロセスを適切に評価する。
【富田昭雄委員】
今後、DXや生成AIの活用が進み、デジタル人材の需要が増加すると、デジタル人材の不足に対して、育成や外部からの獲得をどのように行うかが課題になるが、どのように取り組むのか。
【人事課担当課長(人事)】
本県では、DXを推進するICT人材を幅広く確保するため、2021年度から民間企業等職務経験者を対象とした採用試験で、ICTの試験区分を新設するとともに、受験資格である職務経験年数を7年から3年へ、試験実施回数も年1回から2回へ変更してデジタル人材の確保に取り組んでいるところであり、3年間で7人が採用され、ICT関連業務に従事している。
また、民間企業の経営手法やコスト意識などを習得し、意識改革や資質向上を図ることを目的として実施している、民間企業等との人事交流において、ICT関連企業に職員を派遣するとともに、ICT関連企業からも研修生として職員を受け入れることで、民間企業の知識やノウハウを吸収しながら職員のデジタル能力の向上に努めている。
今後も外部からのICT人材を効果的に活用・確保していくとともに、職員のデジタル人材育成も図っていきたい。
【富田昭雄委員】
喫緊の課題であるため、人材獲得にぜひ取り組んでほしい。
時代が大きく変わる中、行政も変わらなくてはいけないと思う。このため、現在、効率化に向けて取り組んでいると思うが、まずは、内部のパワーアップのために、それぞれがスキルアップすることが大切である。研修の実施や民間企業との連携を図り、デジタル機器を使った効率化もよいと思うが、内部での取組も進めてほしい。
もう一つ、デジタル人材の不足はどうしようもないため、外部とどう連携していくかが今後の大きな課題であると思う。昨日、防災安全局関係の総務企画委員会でも発言したが、地震発生時に、台湾では4時間という大変短い時間でテントを張ることができたと聞く。過去の災害で対応できなかったことを教訓に、NPOやNGO、民間企業と連携して日頃から対策し、4時間でテントを張ることができたとのことである。
県庁の中にないスキルや経験値が、今後経験不足という形で表れると思うため、人材が足らない場合は、外部と連携する、外部から獲得するなど、外部組織との日頃からの情報交換等を行いながら、全庁的なパワーアップを図る必要がある。
行政の在り方として、県庁の役割が昔と違い大きく変わってきたと思っている。今後の人口減少の中で、地域の課題をどう解決していくかが行政の一番の役割だと思っており、できるだけ単純作業等は効率よく機械で行い、余ったマンパワーを課題解決に向けて取り組むために、人材を育成し、地域の課題を吸い上げて、それをどう解決するかという調整役に回ってもらうという在り方の変化を、県庁内も進めていく必要があると思う。そのためのデジタル化やDX推進であってほしいと思う。これからの県庁の在り方について、総務局長の考えを伺う。
【総務局長】
これまでの答弁のとおり、今年度、デジタル化・DX推進担当を設置するほか、総務局に局長級のデジタル戦略監を司令塔として配置し、DX推進体制の強化を図った。こうした職員を中心に、今年度、知事を本部長とするDX推進本部内に、新たに愛知県庁デジタル化・DX推進チームを設置し、そこで、デジタル技術を活用した新たな仕組みの構築や既存の仕組みの見直しなど、一層強力に推進していく。
こうした全庁を挙げてのDX推進の原動力、エンジンとなるのが、デジタル化・DX推進担当を担う、主に20代から30代のデジタル技術に慣れ親しんだデジタルネイティブとも言われる、若手職員であると思う。
大切なことは、そうした若手職員が孤立しないよう、若手職員の発想やアイデアを、いかに年長の者が邪魔をせず、組織としてしっかりと酌み上げて具体的な取組に仕上げていくかが重要であり、組織としてバックアップすることが大切であると認識している。
こうした認識の下、デジタル化の推進の目的である、県民や事業者の利便性の向上、行政の効率化による職員の負担軽減や意欲増進に引き続き取り組んでいくが、こうした中、今、委員から指摘があった、DXで行政効率化し、それで生み出したマンパワーを喫緊の行政課題に投入していく姿を作るということは、まさにそのとおりであり、そうした姿勢で臨んでいきたい。
また、その際に、デジタル化への対応が困難な人への配慮や現場で実務を担う市町村との調整について、今後様々な行政分野でDXが進んでいくため、個別の行政分野ごとに様々な課題に直面すると思うが、十分留意しながらしっかりとDXを進めていきたい。